蛙がうるさい 暴走族がいる コンビニは少ない スーパーは一つだけ
他所とくらべてしまえば劣ってる部分はたくさんある。
でも、ただ夕焼けが素晴らしく綺麗だから、たったそれだけでプラマイゼロ、むしろプラスなんだ。
何も考えずに暮らしてた少年時代から時は流れ、20歳になった俺は就職か、夢を追うかに揺れていた。
この街にいたって何も変わらないけど、友達もいるし、家族もいるし、離れたいとまでは思わなかった。
何よりこの街から見える夕焼けを、東京から見えるなんて思えなかった。
夏になって、日が伸びた。
一歩出たら地平線すら見えそうなのに。
夕陽を隠すようにドヤ顔を振る舞う高くもないビルの高さに比例して、伸びていく影が夜を連れてくる。
このままここにいちゃダメだ。
大好きだった夕焼けにそう言われた気がした。
この小さな街を抜け出して変わらないものを変えていこう。
きっと、帰る場所ならここにある。
不安じゃないと言えば嘘だ。
でも期待してないと言えばもっと嘘になる。
俺は踏み出す。もう迷ってばかりはいられない。
愛した街を離れた人
愛する街に居続ける人
遠く離れた場所で夢を追う人
この街で幸せを見つけた人
君の街は、いつだって君を待っている。
安心して行ってこい。
安心して、戻ってこい。
俺も、そうします。